当記事は、通信制高校の現実についてお伝えします。
不登校でも通うことができ、多彩なコースで魅力的な通信制高校。
HPや資料ではメリットばかり記されているように見えますが、本当のところはどうなのか、気になりますよね。
結論、通信制高校は全日制高校と比べて有利といえる現実もありますが、残念ながら厳しい現実もあります。
私は通信制高校の入学相談窓口を担当し、これまで1000名以上の入学希望者の対応をしてきました。
全日制高校と比較し、通信制高校の有利な点と不利な点を、これまでの経験を含めた現実をお伝えします。
通信制高校について深く知っていただける内容なので、ぜひ参考にして下さい。
通信制高校は本当にやばいのか
通信制高校は現実的にやばいのでしょうか。
実際に知恵袋や口コミサイトでは、このような通信制高校のやばい書き込みを目にします。
- 高校生活という感じがない
- 学力が身につかない
- カリキュラムがおかしい
- レポートが低レベル
- 模試がない
- 進学指導がない
- 卒業後はニートかFラン大学生
- ヤンキーが多い
- まともな先生がいない
- まともな生徒がいない
- 友達できない
- 学費が高い
- 教材費がぼったくり
- スクーリング代が高い
このような口コミや書き込みは、残念ながらよく目にします。
通信制高校に行っていない人の書き込みと思えるものもいれば、通信制高校に在学中の人と思われる口コミもあります。
これは私見ですが、このような書き込みをする人は通信制高校の仕組みを知らず入学した人が多いです。
入学前に通信制高校のコースやカリキュラに理解があれば、ネガティブに思うことは少ないはず。
ただ、このような口コミはすべて違う、というわけでもありません。
なかには通信制高校で叶えられないデメリットとして、当てはまっていることもあります。
ここからは、包み隠さず通信制高校の厳しい現実について紹介します。
通信制高校の厳しい現実
全日制高校と比較して、通信制高校が厳しいと感じる5つの現実についてお伝えします。
自己管理できないと卒業できない
通信制高校生が最も問われるのが自己管理。
学習スケジュールを自分で管理しないと、3年で卒業できないのは非常に厳しい現実でしょう。
3年間で74単位修得でと卒業できる中、科目選択や単位履修を比較的自由に決められるのが通信制高校です。
自由な分、責任も自分。
通信制高校では学習に必要なレポートも、やりたくないからサボってしまえば溜まってしまい単位未履修となります。
自己管理は、楽なように見えて厳しいのです。
学期途中で単位引き継ぎができない
高校卒業には3年間の在籍および74単位の履修が必要です。
全日制高校の場合、単位は1年間修了した時点で修得できます。
もし、夏休み後の2学期や年度末の3学期に転校したいという場合は、単位を引き継ぐことができません。
期の途中で転入してからその年度で修得できる単位は限られているため、卒業年度も変わる可能性もあります。
また、高校を中退してしまった場合も年度の途中で退学すると単位未履修となります。
この場合も、残りの単位を編入する通信制高校で習得できなければ卒業年度が変わります。
どちらの場合も通信制高校に相談する卒業年度の状況など教えてくれるので、早めに相談することが大事です。
学習レベルにばらつきがある
通信制高校は、全日制高校と比較し学習レベルが一定ではありません。
理由は、通信制高校には不登校や学習障害、専門コースを早くから学びたい成績優秀者まで様々だからです。
通信制高校サポート校の場合、履修のサポートをする担任や、分からない内容を教えてくれる先生もいます。
レポートを解説する授業もありますが、なかには物足りないと思う生徒もいれば追いつかない生徒もいます。
習熟度別にクラス編成している通信制高校もありますが、全日制高校ほど学習レベルが整わないのが現実です。
世間体が気になる
通信制高校は未だ「不登校の行く高校」「高校中退の人が行く高校」「ヤンキーが行くところ」
というイメージがあり、世間体が気になるという厳しい現実もあります。
これは私の生徒の話ですが、地元から通信制高校に通っているのことに肩身がせまく、通常より早い時間の電車で通学していました。
実際には、通信制高校も全日制高校と同じ高校卒業資格を取得できる学校です。
しかし、どうしても気にする人は周りから変な目で見られないか、偏見がないか気がかりになります。
部活や課外活動は活発ではない
部活動が盛んな通信制高校は多くありません。
クラーク記念国際高等学校が甲子園に出場したのは驚きましたが、特に運動部は通信制高校では少ないのが現実です。
部員や練習場所の確保が難しいと言われますが、実際は部活動とし体育連盟などが認めてくれるかどうかに関係します。
私がいた通信制高校でも認められたのは演劇部のみでした。
また、部活動には顧問が必要です。
人員的な問題もあり、通信制高校では部活が難しいと言えます。
一方、文化祭や体育祭といった、学校内における課外活動に関しては積極的に取り入れている通信制高校もあります。
入学前に部活動や課外活動が積極的かどうか、確認しておくことが重要です。
通信制高校のほうが有利な現実
通信制高校には厳しい現実があることが分かりました。
反対に、通信制高校という選択が有利になることも現実問題としてあります。
特に私が通信制高校にいた時代に、生徒や親から通信制高校を選んでよかったと言われた特徴をまとめました。
通学タイプを選択できる
毎日通学しなくてはいけない全日制高校に対し、通信制高校は通学タイプを自分で選択することができます。
スクーリングを通学タイプに選択すれば、指定された登校日に通学すれば出席日数としての条件はクリアできます。
毎日のように通いたい場合には通学コースもあります。
通信制高校のサポート校であれば、登校に不安がある生徒でも安心です。
サポート校への授業参加は、単位修得の出席日数とは違いうからです。
生徒は学校に通学している気分でも、万が一通学できなくなってしまっても出席日数と意思手のカウントはされません
※ただし年1回のスクーリングへの参加は必須です
留年がなく単位も再履修できる
学年制の全日制高校と違い、通信制高校は単位制。
どちらも3年間で74単位を修得できれていれば卒業できますが、単位制は1年次に単位を落としても2年に進級できます。
一方、学年制は1つでも単位を落とせば留年になるため、卒業まで3年以上かかることが確定です。
単位制高校は、1年目に修得できなかった単位も2年、3年で取り直せば3年間で卒業が可能。
留年を気にせず3年間の頑張りで卒業資格を取得できるのが、通信制高校最大の特徴です。
入学するタイミングが自由
通信制高校は入学時期が柔軟で、年に1度しかない全日制高校と比較しても転入しやすい特徴があります。
高校を変わりたいと思ったタイミングで転入できるのは、気が変わりやすい思春期の子供にとって大事なポイントです。
ただし、学期途中での転入は高校ごとにルールがあるので、詳しくは転入受け入れ可能な通信制高校に相談しましょう。
高校を辞めてしまうと入学時期が年1回(4月、もしくは4月10月の2期制の学校もあり)の場合もあります。
そのため、編入の場合は必ず事前に通信制高校へ入学時期の相談をしましょう。
修得した単位は引き継ぎが可能
いま通っている高校で単位を修得している場合、通信制高校へ転校する際に単位の引継ぎができます。
通信制高校の卒業要件は、3年間の在籍期間と74単位の修得です。
高校2年生で60単位修得した状態で転入すれば、残り1年で14単位以上の修得で卒業できます。
高校中退してしまった人でも、修得した単位を編入先の通信制高校で引き継ぐことができます。
どれだけ単位を修得しているかは、前籍校で成績単位修得証明書を発行してもらえればわかります。
詳しくは、一度前籍校へ問い合わせてみると良いでしょう。
勉強とやりたいことの両立が可能
通信制高校は通学日数が少なく自学自習が多いので、日中に活動できる時間が全日制高校より多いです。
以前は、通信制高校は仕事をしながら卒業資格を取る生徒が多かったのですが、最近は「自分のやりたいこと」との両立で選択する生徒も増えました。
例えば紀平梨花さんのように、スポーツと学業を両立するトップアスリートが通信制高校出身(クラーク記念国際高等学校)だったりします。
芸能活動や習い事など、いましかできないことに打ち込む時間があるのは通信制高校のほうが圧倒的に有利です。
自分のペースで学習できる
学習を自分のペースで進めることができるのも、通信制高校の魅力の一つです。
全日制高校では同じ時間に授業を受け、理解していても理解していなくても授業は進んでいってしまいます。
反対に通信制高校では自分のペースで学習を進めれるので、苦手な部分は時間をかけ理解している部分は先に進めるといった学習方法をカスタマイズできます。
授業についていけず学校に行きたくなくなってしまった人や、学習障害で一定の科目の理解に時間がかかる場合、通信制高校の学習ペースが合っています。
専門的なコースを学べる
通信制高校には多彩な専門コースがあり、中には専門科目を高校卒業資格の単位として認めている高校もあります。
- アニメコース
- イラストコース
- 漫画・イラストコース
- ネイルコース
- メイク・美容コース
- ファッションコース
- 美容師養成コース
- 歌手コース
- ミュージックコース
- 声優・タレントコース
- デザインコース
- ダンスコース
- アパレル販売員コース
- eスポーツコース
- プログラミングコース
- 大学進学コース
中学校卒業後、早くから専門コースを学びたいと入学者も増え、通信制高校は以前のような「不登校の学校」「高校中退した人の学校」ではなくなりました。
大学進学コースなど、有名大学への進学に力を入れている学校や、指定校推薦枠のある学校もあります。
途中で通学タイプや専門コースの変更も可能
通信制高校では通学タイプやコースが選択できますが、途中で自由に変更できる特徴があります。
美容師養成コースに入ったけど、音楽に興味がわいてきたので、音楽コースへ変更したいという要望も対応可能です。
通学タイプも最初は通学できたけど、体調が整わず自宅学習に切り替えたい、という希望にも柔軟に対応してくれます。
興味関心や自分の体調に応じ、学ぶ内容や通学スタイルを変更できるのは、気が変わりやすい思春期の子供や体調に不安を抱える子供でも通いやすいです。
先生との距離が近い
通学しない通信制高校は先生との関りがないというイメージかもしれませんが、以外と先生との距離は近いです。
理由は、マンツーマンでのやり取りが多いからです。
レポートの提出にも、個別に連絡しフォローするので、全日制高校のようにホームルームで全体発信と比べても密です。
また、様々な心の闇(いじめ、挫折、友人トラブルなど)を経験してきてきた生徒への配慮にも慣れた担任が多いです。
通信制高校サポート校の先生になると、生徒数が多くないためより親身になって相談に乗ってくれる先生もいます。
人間関係を気にする必要が少ない
毎日通学して人間関係に気を遣う全日制高校と比較し、通信制高校は人間関係を気にする必要は少なくなります。
通信制高校では、出席日数にカウントされるのはスクーリング時のみです。
学校によっては月1回程度、集中スクーリングであれば年に1回の登校で終了です。
月1回や年に1回の方が気を遣うのでは?と思うかもしれません。
私がいた通信制高校では年1回のスクーリングでしたが、生徒同士すぐに打ち解けていたのでさほど心配はいりません。
数日間のスクーリングなので、いい距離感の中で時間も過ぎていけるようで、大きなトラブルはありませんでした。
また、通信制高校のスクーリング時の授業は、全日制高校よりも少人数制を取っていることが多いです。
精神的な苦痛を感じることが少なく、学校生活を送ることができるのも大きな特徴と言えます。
サポート校を利用した高校生活を味わえる
通信制高校は全日制高校よりも通学日数が少なく自宅学習なので、高校生としての生活はできにくい環境にあります。
通信制高校のサポート校を利用することで、充実した高校生活を楽しむことができます。
サポート校とは、通信制高校を卒業するための学習面や生活面をフォローしてくれる教育施設。
週1日~週5日通学スタイルが選択でき、高校の学習や専門コースといった全日制高校ではできないことを教得てもらうこともできます。
自学に不安を感じる人や、全日制高校に毎日通えるか不安だけど高校生活を楽しみたい、という人に適しています。
選ぶ通信制高校によっては厳しい現実でなくなることもある
ここまで通信制高校で厳しい現実と、有利だと言える現実についてお伝えしました。
ここからはネットや口コミで見た通信制高校の現実のなかで、「これは選択する通信制高校による」と実体験から感じたものをお伝えしていきます。
学力アップし高ランク大学への進学が難しい
通信制高校は入学者の学力が一定ではないので、通信制高校に通うことでの学力向上は難しいでしょう。
ただし、時間を有利にすることで全日制高校生以上に学力を伸ばすことも不可能ではありません。
例えば全日制高校では、毎日通学しなくてはいけませんが、通信制高校は自宅学習の分、学ぶ内容や時間をコントロールすれば学習時間は増やせます。
通信制高校で昼間は予備校に通い、希望大学に合格する生徒もいましたが、これは全日制高校ではできない時間の使い方です。
また、通信制高校にも早稲田大学など高ランク大学の指定校推薦枠を持っている学校もあります。
一概に学力アップが難しく大学進学できないというわけでもありません。
学費が安いもしくは学費が高い
通信制高校のメリットとしてネットでは「学費が安い」と書かれていることがあります。
一方、口コミを見ると「学費が高い」という声もあり、どちらが本当のことを言っているのか不安だと思います。
結論をいうと、自宅学習を選べば学費は安く済み、通学タイプを選べば学費は高くなる、が正解です。
学費は大きく分けると、①授業料②通学タイプの授業料③スクーリング費④教材費です。
混同しやすい①と②ですが、通信制高校の①授業料は単位修得料で、1単位履修でかかる費用を指しています。
学費が安い通信制高校で検索すると、ほとんどの学校は自宅学習タイプで試算されています。
自宅学習タイプなので、かかる費用は①③④となります。
一方、通学タイプやサポート校で専門コースなどを選択すれば、②通学タイプの授業料がかかります。
eスポーツを学ぶとなれば、PC環境などハード面や専門技術を教える講師の先生の授業料が必要になります。
また美容師養成コースになれば、ハサミやウィッグなど④教材費も普通科目以上に費用が掛かることになります。
なので、通信制高校は一概に費用が安い、高いといえないのが現実です。
ただし、今は私立通信制高校でも世帯年収が910万未満であれば高等学校就学支援金で授業料免除になります。
詳しくは、興味のある通信制高校の説明会で詳しく教えてもらいましょう。
友達を作りにくい
通信制高校は通学日数が少ないので友達ができにくい。
これを現実問題として取り上げていることもありますが、通信制高校だから友達ができにくいということはありません。
たしかに全日制高校と違い通学日数が少ないので、毎日のように顔を合わせることはありません。
しかし、興味あるコースや、同じ境遇であったりと、通信制高校のほうが共通点が見つかりやすいこともあります。
全日制高校のように通信制高校でも、オリエンテーションや友達作りができる機会を作るように工夫しています。
通信制高校だから友達ができないということは、あまりないのが現実です。
就職活動で不利になる
通信制高校のほうが全日制高校と比較し就職が不利と言われますが、通信制高校の中でも就職に有利な場合もあります。
例えば美容師養成コースなど、高卒と同時に国家資格を崇徳できるようなコースは就職率も高く非常に就職に有利です。
その他でも、全日制高校では不可能な日中のアルバイト経験や高卒資格以外の資格取得に時間を使うこともできます。
経験や資格を手にすれば、希望の業界への就職を有利に進めることもできます。
一方、通信制高校は企業から存在を知られていない部分もあり、高卒の求人票が届かないこともあります。
進路スケジュールの流れが通例で決まっている全日制高校より、通信制高校の進路指導は未だ発展途上であり、その点においては不利なこともあります。
選択するコースや学ぶ資格や経験によって、就職は有利にも不利にもなるのが通信制高校の現実です。
結論
ここまでをまとめます。
▼通信制高校の厳しい現実▼
- 自己管理できないと卒業できない
- 学期途中で単位引き継ぎができない
- 学習レベルにばらつきがある
- 世間体が気になる
- 部活や課外活動は活発ではない
▼通信制高校のほうが有利な現実▼
- 通学タイプを選択できる
- 留年がなく単位も再履修できる
- 入学するタイミングが自由
- 修得した単位は引き継ぎが可能
- 勉強とやりたいことの両立が可能
- 自分のペースで学習できる
- 専門的なコースを学べる
- 途中で通学タイプやコース変更も可
- 先生との距離が近い
- 人間関係を気にする必要が少ない
- サポート校で高校生活を味わえる
▼選ぶ通信制高校によって違う▼
- 学力アップと高ランク大学への進学
- 学費が安いもしくは学費が高い
- 友達を作りにくい
- 就職活動で不利になる
通信制高校には総じて厳しい現実も有利な現実があるのも事実です。
ただし、全ての通信制高校に当てはまるわけではありません。
また人によっては気になったり気にならなかったりと、それぞれで通信制高校に求める価値観も違いがあると思います。
ここでは書ききれない通信制高校のメリットやデメリットは、別の記事にて丁寧に解説しています。
併せてご覧頂くと、通信制高校を正しく理解して頂けるようになります。
通信制高校の理解ができ興味をもったら、まずは気になる通信制高校の情報を手に入れましょう。
ズバット通信制高校比較なら、自分の住むエリアから通える通信制高校を調べることができます。
資料の中から気になる学校があれば、見学して学校の特徴を理解しましょう。
ホームページや資料だけの情報だけで決めてしまうのは、高い確率で入学後の後悔につながります。
通信制高校に行って人生終了にならないよう、通信制高校の良し悪しを頭に入れ学校生活をイメージしていただけたらと思います。