通信制高校に入っても不安感じることのひとつが、卒業後の進路です。
通信制高校に入学や転入を考えている人にとって、深刻な問題です。
実際に、通信制高校からの就職は不利になると言われています。
私は通信制高校で進路指導を担当したことがありましたが、学校イメージや仕組みの問題から就職が難しい環境だと感じました。
それでも、ここ数年で通信制高校の環境は変わっています。
さらに、全日制高校より就職を有利にできる方法によって通信制高校は就職できる学校になってきています。
この記事では、不利と言われる通信制高校の就職と対策法を詳しく解説します。
通信制高校が就職で不利になる理由
通信制高校だと、いくつかの理由によって就職が不利になってしまうこともあります。
それぞれ解説していきましょう。
面接官のイメージがアップデートされてない
採用試験を受ける会社の面接官が、通信制高校のイメージがアップデートできていない場合、就職で不利になる可能性があります。
- 不登校?
- 体調面や精神面が不安?
- 勉強ができない?
- 素行に問題あり?
- 協調性に欠ける?
ざっくりいえば、通信制高校=ちょっと問題があって行く高校。
面接官の中にこんな通信制高校イメージを持っている場合、就職が不利になってしまうこともあるでしょう。
進路指導の差
また、全日制高校と通信制高校の違いは進路指導においても違いがあります。
通信制高校は不登校傾向の生徒の学習支援や、人間関係などで傷ついた生徒のメンタルサポートなどが中心です。
多くの生徒は高卒資格取得が目標のため、卒業後の進路サポートに関しては発展途上です。
通信制高校では、約4割の生徒が卒業後の進路が未定です。
進路サポートが手厚ければ、卒業後未定の割合は少なくなるでしょう。
それゆえ、進学も就職もしていない生徒が多く、通信制高校=就職できないイメージになっています。
その点、全日制高校では進路カリキュラムが長年に渡り構築され、進路に対する意識付けもでき進路が決まりやすい仕組みになっています。
通信制高校は進路カリキュラムを組んでも、全日制高校と違い強制参加が難しく課題となっています。
但し、今後は通信制高校も進路指導に力を入れていくことは間違いありません。
それだけ通信制高校は、まだ発展途上にあるのです。
通信制高校は求人票が少ない
現状で通信制高校が全日制高校に劣るのは学校に届く求人票の数です。
企業は、通信制高校に求人票を出したくないのではありません。
通信制高校がたくさんあり、これほど個性あふれる生徒がいることを企業が知らないだけなのです。
企業側は大学生から高校生へと、求人の幅を広げたいと考えています。
でも実際に採用担当者に聞くと、通信制高校に求人票を持っていく流れはほとんどありません。
そこに目をつけている企業は増えており、私が進路担当をしていた時でも求人票を持って挨拶にくる企業は年々増えていました。
しかし、まだ多くの企業は通信制高校の存在を知らないため全日制高校と比較して就職が不利になってしまうことがあります。
自分のイメージ
さいごは、これ。
あなたの持つ通信制高校のイメージが就職を不利にさせているかもしれません。
確かに不登校や人間関係に悩み通信制高校に転入してくる生徒もいれば、学力不振で入学する生徒もいます。
しかし、通信制高校にはスポーツや芸能活動と学業を両立する事ができる教育システムもあります。
あなたが思っているほど、決して世間のイメージは悪くはありません。
通信制高校は自学自習の中で、自主性がないと卒業できません。
スクーリングという厳しい面接指導がなければ単位が認定されません。
単位認定試験で合格しなくては単位修得がされません。
自分に厳しくないといけない通信制高校なのに、通っている生徒ほど過小評価しています。
自己管理ができ、自発的に行動できる点では、全日制高校生以上に社会に適していると私は強く思います。
自分を信じ、自信をもって就活に臨めば就職できないことはありません。
実は通信制高校が就職で不利になることはない
これは知っておいてほしいことですが、制度上で通信制高校が就職で不利になるということはありません。
実際に、全日制高校よりも通信制高校の方が就職率が高いデータもあります。
通信制高校は全日制高校と同じ高卒資格
通信制高校は全日制高校と同じ『高等学校卒業資格』を取得できます。
以前は〇〇高等学校(通信課程)と記載することもありましたが、今はそのような記載はありません。
全日制でも通信制でも定時制であっても、卒業資格は同じ高等学校卒業資格となります。
なので、高卒求人が出ている企業はどの会社でも採用試験を受けることができますし、通信制高校だから面接が受けれないということはありません。
似たもので高卒認定試験がありますが、「高卒同等の学力を有する証明」であり卒業資格ではありません。
高認でも高卒とみなして採用を行う企業も増えてきていますが、通信制高校以上にハードルが高いので注意が必要です。
通信制高校のほうが就職率は高い
通信制高校卒 | 全日制高校卒 | |
大学進学 | 18.5% | 55.7% |
専門学校進学 | 22.5% | 21.0% |
就職 | 19.6% | 17.6% |
その他 | 39.4% | 5.7% |
最新の文部科学省調べによると、通信制高校の就職率は全体の19.6%で全日制高校より高い就職率です。
平成24年の14.3%からすると、かなり就職している卒業生が増えています。
全日制高校卒の就職者は17.6%と、データ上では通信制高校の生徒の方が就職している割合は高くなります。
また、資格取得や就職に向けたカリキュラムを導入している高校も増えているため、通信制高校の就職率はますます高くなっていくことでしょう。
通信制高校だから就活を有利にできる
本当は通信制高校は高卒求人では不利じゃないのに、イメージや求人票が少ない理由で就職が難しい状況を変えるにはどうしたら良いでしょう。
それは会社が求める人物像を語るか、求められるスキルを身に付けておくかです。
具体的な対策としては次の3つ。
これは全日制高校では難しく通信制高校生だからできる方法で、就活を有利にできます。
- 資格を取る
- アルバイトをする
- 面接でPRする
就職に有利な資格取得する
通信制高校に通いながら、就職に強い資格を取得できれば採用試験で強い武器になります。
全日制高校よりも登校日数が少ない通信制高校生だからこそ、積極的に資格取得していくことも容易です。
また『中学生から美容師になる最短ルート』でも紹介していますが、美容師資格を取得できる通信制高校(高等専修学校)があります。
試験に合格すれば、美容師免許と高校卒業資格を取得することができます。
ほどんどの美容室では専門学校生が求人のメインです。
そのため、高卒で美容師免許を持っているのは就職にも非常に強く、私がいた学校では美容師免許を取得した生徒の就職率は100%でした。
アルバイトをする
全日制高校にない通信制高校では、アルバイトと学業を両立できます。
アルバイトの経験は、会社側も注目している項目です。
面接でも「どんな仕事をした?」「何年続いた?」「失敗経験や辛かったことは?」などはよく質問されます。
その経験を好印象と受け止めてくれたら、このような評価につながるためおすすめです。
アルバイトは社会経験の一つと感じている企業は非常に多いです。
そのため、可能な限りアルバイトの経験はしておいたほうが良いでしょう。
高校生がアルバイトを探す場合、時給や仕事のイメージがつきやすいコンビニやファミレスを選択する生徒が多いです。
しかし、自分が将来進みたい仕事に関われるアルバイトのほうが面接でも評価が高いのでお金だけに惑わされないように注意しましょう。
時給だけに囚われてしまうと、希望の就職先へのチャンスを逃してしまう可能性もあります。
在籍期間の活動を面接でPRする
会社の面接官に通信制高校を理解してもらえば、就活はさらにうまくいきます。
高校生の就職試験の面接では、履歴書に書かれた内容から多く質問されます。
通信制高校出身となると、次のような質問はされる可能性が高いです。
- なぜ通信制高校に入学したの?
- 通信制高校ってどんなところ?
- 学校生活でどんな経験をした?
しかし、通信制高校に通う生徒も通信制高校がどんな学校か説明できないことが多いです。
端的に言えば、
『通信制高校はレポート、スクーリング、試験があり自学自習で全日制高校と変わらない高校卒業資格を取得することができる学校』です。
入学、転入理由は様々です。
それぞれの理由を説明し、学校を変わって高卒資格を取りたかったことを説明すれば会社は理解してくれます。
最も面接で会社側が懸念するのは、「説明もできないのになんで通信制高校に行ったの?」となることです。
通信制高校生が就活で内定をもらうための面接テクニックについては、別の記事で紹介しています。
通信制高校から大卒を経て就職する
通信制高校からすぐに就職できない場合、大学進学後に就職する方法もあります。
どれだけ入りたい会社でも応募条件が大卒なら応募できませんので、大学へ進学するという手段も一つです。
通信制高校は大学や専門学校への指定校推薦枠も多く、全日制高校以上の進学先を手に入れることもできます。
上級学校で過ごす間に職業の選択幅も広がるだけでなく、自分の興味も広がるはずです。
進学することで体調を整え、勉強など規則正しい生活ができる準備期間にもなります。
通信制高校から大卒資格を取得し、高卒ではできなかった就職先や公務員になった卒業生も多く見てきました。
通信制高校から進学できるかについては、別の記事でも詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
進路に有利な通信制高校に行けば就職できる
就職に強い通信制高校があれば、そこを目指して進学する方法もあります。
就活に適した専門コースや就職サポートが手厚い通信制高校は、就職に有利です。
以下は一例ですが、通信制高校で資格やスキルを取得できたり、進路相談を手厚くしてもらえる高校はあります。
クラーク記念国際高等学校
外国語、IT、デザイン、福祉、スポーツなどコースが豊富なクラーク記念国際高等学校。
通信制高校の中でもトップクラスの学校法人で、学校のカリキュラムおよび進路サポートについても手厚く支援してもらえます。
飛鳥未来高等学校
三幸学園グループで専門学校があり進学のイメージが強い飛鳥未来高等学校。
就職に関しては生徒と年齢も近い、比較的若い担当の先生が対応してくれるため相談がしやすいです。
進路は迷いが多く、相談のしやすさからサポートしてもらえるのは強みです。
北海道芸術高等学校
サポート校や専修学校で芸術系が学べる通信制高校の北芸。
美容師・ファッション・ダンス・マンガ・声優と専門コースがあるため、就職の幅も広いのが特徴です。
特に美容系は資格取得ができれば就職率はグンと上がります。
やりたいことが決まっている人におすすめです。
結論
以上をまとめます。
- 今は就職が不利と言われている
- 未来は企業も学校も就職に力入れてく
- 現状でも全日制より就職率高い
- 通信なら資格取得やアルバイトできる
- 通信制高校→大卒→就職可能
- 就職に強い通信制高校もある
通信制高校でも、しっかりと対策すれば就職できます。
実際に私が通信制高校で進路を担当して思ったことがあります。
それは、大学生と比較し自分の進路に対して意思をもっている生徒が少ないということ。
どこか「誰かに決めてもらいたい」感があり、進路を決めかねてしまいます。
自分でこういった会社に入りたい、と意志を持っている生徒はいませんでした。
だからこそ、就職サポートや専門コースで学び就職に強い通信制高校がおすすめです。
重要なのは、高校を辞めてしまわないことです。
残念ながら、今の日本はいまだ学歴社会。
ほとんどの会社の募集要項の学歴は「高卒」以上のため、高校を辞めてしまっては就職できる幅も狭くなります。
通信制高校卒業でもらえる高校卒業資格は、就職にも進学にも強い大きな資格です。
就職は今後の人生が決まる非常に大切な選択なので、決して高校を辞めたり進学することはせず、焦らずゆっくりと考えてきましょう。